02.いま、日本の医療に何が起こっているか ~地域医療の衰退と医療費の増加~

病気になったら病院に行く。急病なら救急車を呼ぶ。自宅での療養が心配なら入院する。

そんなことが当たり前になったのは、実はそれほど昔のことではありません。 戦前まで、多くの医療は患者さんの自宅で行われていました。医師の往診も一般的に行われており、 誕生から死まで、医療は自宅で提供されるのが普通でした。
 しかし、高度経済成長を背景に、地域ごとに病院がつくられ、医療技術が急速に進歩したことなどから、 医療は病院中心となり医師の往診も減少していきました。また、交通手段の発展によって救急搬送システムが整備されたこと、 あるいは国民皆保険制度が充実したことにより、日本は世界有数の病院フリーアクセスの国となりました。 つまり患者さんが行きたいときに行きたい医療機関に行けるシステムが確立され、少ない自己負担で医療を受けられる時代が長く続きました。

「病院医療」の発展が、多くの病気を治し、平均寿命を延ばすことに貢献したのは事実です。しかし、病院医療に大きく依存するようになった結果、いくつかの弊害が出てきました。

1)「地域医療」の衰退
 自宅での療養が一般的だった時代には、地域の開業医は慢性期の疾患管理を主体としながら、一部の救急医療まで担っていました。 「かかりつけ医」として地域の家庭に入り込み、介護の相談にも乗っていました。患者さんの容態に変化があった場合にも、まず駆けつけていたのが「かかりつけ医」でした。

ところが、病院に多くの機能が移ったことにより、本来は地域で解決しなければならない一次救急や介護的な問題に対応する開業医が減少し、 さらには慢性期の医療までもがいわゆる“老人病院”といわれるところへ依存するようになりました。介護の受け皿が不足し、“介護難民”も増加しています。

2)病院の疲弊
 いま、病院の救急外来は、風邪や腹痛、軽度の外傷など、かかりつけ医による診察・処置で十分な一次救急患者であふれています。 その結果、病院でなければ対処できない急性期・超急性期医療の受け入れにも支障をきたしています。医療者が疲弊し、人手不足が叫ばれています。

医療資源の有効な利用という観点からも、「地域医療」において、慢性期疾患の管理だけではなく、救急医療の一部、 すなわち一次救急から二次救急の一部までを担うのが望まれます。

3)医療費の増加
 高齢者の増加に伴い、医療費が年々増加しています。「通院できない患者は入院を」という社会的入院の増加、高齢者に対する必要以上の診療などもその要因となっています。

 財政面から高齢者の医療を再構築する必要性が出てきました。「病院」から「地域」へ、「医療」から「介護」への移行を目指し、 診療報酬や保険制度の枠組みが変更されています。2000年に介護保険が創設され、2006年には在宅療養支援診療所の制度がつくられました。

高齢者を支える医療システムの一環として、「在宅医療」に注目が集まるようになりました。(2008年/舩木良真)