03.どこで最期を迎えるか ~多くの人が望んでいること~

2006年の日本の人口における65歳以上の高齢者の割合は21%でした。これが2050年には35%になると予測されています。 また、高齢化が進むに連れて亡くなる人の数も増え、2038年には約170万人が亡くなる時代になるといわれています。 亡くなる場所は戦後一貫して在宅から病院へ移っています。日本では、病院で亡くなる人の割合は2005年では79.8%、在宅では12.2%でした。 一方で、厚生労働省のアンケート調査では、6割の人が「自分の住みなれた家で、家族に看取られながら人生の最後を迎えたい」と望んでいます。 しかし現在の日本の医療体制では、こうした望みを十分にかなえきれていません。

さらに、寝たきりや認知症により通院困難となる高齢者が増加します。彼らの生活を支える医療と介護が必要です。

また、疾病構造も変化しています。主な死亡原因は、肺炎などの感染症から、悪性腫瘍や血管障害などの疾患へ移っています。 これらの疾患では急性期を過ぎても、継続的な医療の介入が必要となります。 彼らの生活とその質(QOL/Quality of life)を支えるために、在宅医療を推進する必要性が出てきました。

北欧などでは、病院で約4割、在宅で約2~3割、それ以外にナーシングホームやケア付き住宅で約3割の人が最期を迎えています。 日常生活に必要な身体機能が比較的保たれやすい疾患の場合は、在宅で終末期を迎えることが可能です。

欧州諸国では、介護サービスを充実させたり、看護師に開業権を認めて処方や点滴など一部の医療行為を行う権限を与えたりするなどして、 在宅医療の推進を図っています。今後、日本でも独居の高齢者世帯や認知症患者が増加することを考えると、医療と介護の連携がより重要になってくるといえます。

最期をどう過ごすか、それは一人ひとりの人間にとってたいへん重要なことです。 病床で最期を迎える時、大切なのは患者さん本人、家族がどれだけ納得できるか、満足して死を受け止められるか、ということだと思います。

「尊厳死」という概念があります。「人間としての尊厳を保ったままで命をまっとうすること」と辞書にあります。 しかし、ある人が尊厳死を迎えられたかどうかを他人が判断するのは困難です。 それよりも一人称の視点で考えること、つまり本人が満足した死に方ができた、という「満足死」の考え方のほうが自然かもしれません。

死を避けられない病に侵されたときにどうしたいか、という欲求は人によってさまざまです。 「とことん闘いたい」「延命を望む」「家族と過ごしたい」「周りに迷惑をかけたくない」「自分がやりたいことをやりつくしたい」 「管にはつながりたくない」など、いろいろな価値観に左右されます。

病院か自宅か、という場所の問題は、本来二次的なものであるはずなのですが、現実には「自宅に帰りたいのに帰れない」という患者さんがたくさんいます。 多くの患者さんは生活の延長線上で最期を迎えたい、それをサポートするのが在宅医療です。

私たちは、患者さんの価値観を軸に、生活者の視点に立って、在宅医療を構築していきたいと思います。(2008年/舩木良真)