04.在宅医療は地域のインフラ ~水道哲学~

「何かあったらどうしよう」--これが、自宅で療養する患者さんにとって最も不安なことでないでしょうか。 しかも、その「何か」とはどんなことかもわかりません。もし24時間365日、“いつでも”だれかが相談にのってくれて、 なんらかの解決策を提示してくれたら、きっと安心して自宅で過ごせるようになるのではないかと思います。
 医療者、なかでも医師がいつでも相談にのる、診療をするということは、患者さんの「安心」を支える必要最低条件であると考えています。 だれもが安心して過ごせる地域社会には、生活者の視点に立った地域の医療・介護システムというインフラ(社会資本)が必要となります。 そのために、地域医療・在宅医療が整備されなくてはなりません。

それは水道と似ています。

水道からは、いつでも蛇口をひねれば水が出ます。水が24時間365日提供されているものだと知っているから、 夜中でも不安はありません。また、その水を飲んでも下痢を起こさないという品質が保たれていることも知っています。だから、私たちは安心して暮らすことができます。

地域医療・在宅医療も、水道のように張り巡らされていることが理想です。
 そのために、いつでも相談できるかかりつけ医や在宅医が、24時間365日対応してくれることが、患者さんにとっての一番の安心につながると考えます。 さらに、それらの医師が生活者の視点を理解している必要があります。

また水道だけでは生活できません。電気やガスも必要です。地域医療・在宅医療においては、 それが看護師やコメディカルなど他の医療者であり、ケアマネジャー、ヘルパーといった介護領域の専門家に該当します。

非営利組織のマネジメントについて多くの名著を残したP.F.ドラッカーは、病院の使命は「患者を安心させること」であると述べ、 「もっとも大事なことは、必ず患者を診ること、それも直ちに診ることである。これしか、患者を安心させることはできない」と説きました。

「患者さんの安心」は水のように普遍的で最低限の質が保たれたものを、いつでも手にできることから得られるのだと認識することが、 生活者の視点に立った医療を考える第一歩かもしれません。(2008年/舩木良真)