06.定期訪問と緊急往診 ~生活に寄り添う医療~

在宅かかりつけ医は、ある特定の医療的問題を解決するだけでなく、患者さんが抱える心理的問題や社会的問題までを包括的にとらえて対応策を考えていく必要があります。

医療的な問題をどう解決するかを考えるのは、医師としての基本的な役割ですが、そのほかに患者さん・ご家族の想いやその心理状態も含めて理解することによって、 生活に寄り添った医療を目指します。在宅医療におけるかかりつけ医は、「人」を中心としたアプローチをとります。

一方、病院医療における目標設定の仕方は、一つひとつの医療的問題に対し、医師が中心となって科学的に分析し、 看護師、コメディカルなどの各医療者とともに専門的に対応していくものです。

在宅医療というと、すぐに「往診」という言葉が思い浮かぶかもしれません。しかし、実際には「定期訪問」と「緊急往診」という二つの形式に分けて考えられています。 一般に「往診」と呼ばれているものは、「緊急往診」を指します。

定期訪問は、医師が患者さんの療養状態に応じて定期的に訪問するものです。 診療の内容は、計画的な治療や、今後起こりうる病状に対して予防的な措置を患者さんやご家族へ指導することが中心となります。 同時に、介護環境や食事の進み具合なども目で見て把握することができ、さらにご家族との関係なども視野に入ってきます。 患者さんの生活を把握し、起こりうる可能性の高い問題を頭に入れ、継続的にかかわりを持っていきます。

それに対して緊急往診は、患者さんの容態が急変したときなどに訪問し、応急的処置を行います。 こちらは、患者さんの「何かあったらどうしよう」に応えるものです。

在宅では病院とは異なる課題が出てきます。たとえば「点滴をする」ということだけを考えても、どこに点滴をつるすのか、 点滴に2時間かかるのなら誰が見守るのか、誰が抜針するのか、患者さんが点滴の最中に抜いてしまわないようにするためにはどうするのか、などいろいろと検討しなければなりません。 ただし突発的な問題が生じたときにも、今までかかわってきた情報を元に医療的問題を考えることによって、生活の中で治療するというアプローチが可能になります。

生活の中で疾患をとらえ、生活の中で治療を行い、元の生活に戻ることを目指した在宅医療を支えるには、 「定期訪問」で医療的、心理的、社会的問題を継続的にとらえ、さらに“いつでもすぐに”対応する「緊急往診」で安心を提供する。 そのために、定期訪問と緊急往診がうまく組み合わされることが必要だと思っています。(2008年/舩木良真)