03.「私の患者」と「私たちの患者」~グループをまとめる共通の価値観~

日本でも、グループプラクティスに注目する医師が少しずつ出てきています。ただし、個人で開業し、 自らの意思決定に基づいて診療所を運営してきた医師にとって、グループで診療を進めるということは、従来とは違った難しさも伴います。 グループプラクティスを成功させるために必要な条件は、通常、開業医がそれぞれ持っているであろう価値観やゴール、管理手法、 意思決定のアプローチについて、「グループとしての」視点を持つことであると言われています(※)。

中でも最も重要なことは、メンバーが共通した一つの価値観を共有するということです。

異なる意思や診療方針を持つ医師が共有できる価値とは、やはり「患者さん」だと思います。 ひとりの医師が判断に迷った時には「患者さんが何を求めているか」に常に立ち返って考えていくことにより、自ずと答えを探しやすくなると思います。 複数の医師の間で異なる意見が出てきた時にも、ディスカッションのポイントが明確になります。

グループで診療所を運営していく上では、1)患者さんのニーズ、2)グループのニーズ、3)各医師のニーズ、 と優先順位をつけて考慮し、意思決定がなされていくのが理想的です。

このとき非常に重要なのは、患者さんを「私たちの患者(Our patient)」ととらえられるどうかではないかと私は考えています。

医師は当然のことですが、自らが主治医を務める患者さん=「私の患者(My patient」を非常に大切にし、懸命に診療します。 患者さんのほうも常日頃から親身になってくれる主治医を信頼していることでしょう。この医師-患者間の絆が強すぎると、夜間の緊急往診で、 別の当番医師が患者さんを診療する際に、入る余地がなくなってしまうことがあります。

もし「私の患者」ではなく「私たちの患者」として、普段からメンバー医師の間で価値観を共有することができていたら、そのようなリスクは下がると思います。

一方、患者さんの側から見ると、緊急往診に来た医師が、主治医と同じ情報を持ち、主治医と同じように価値観を共有し、 自分の意思を尊重して判断してくれるならば、普段から接点のある医師でなくとも、信頼することができると思います。

各医師が担当する患者さんは「私たちの患者さん」。医師たちは、患者さんから○○先生と名前で呼ばれるより、 「三つ葉先生」と呼ばれることが多くなっています。だれが緊急往診にかけつけたとしても同じように対応できるよう、情報の共有に特に力を入れています。(2008年/舩木良真)

※参考文献:Developing a group perspective - group medical practice: Richard T. Hoerl, 1996