09.静かなリーダーシップ ~振り返れば仲間がいる~

グループプラクティスにリーダーは必要でしょうか。プロフェッショナルな医師が対等な立場で、個々に患者さんと向き合っているのだから、 メンバーそれぞれがリーダーだという考え方もあると思います。しかし、一つの組織として価値観を共有し進んでいくために、私はリーダーが必要だと考えています。
しかしここでいうリーダーとは、チームを巻き込んでガンガン引っ張っていくような動的なタイプではなく、もう少し静かなものかもしれません。 なぜなら医師は自律的に働くことを好み、管理することにも管理されることにも慣れていないと考えるからです。

「リーダーシップ」について、私は昔から興味がありました。さまざまな本を読み勉強してきましたが、最近、視界がスッと晴れるようなとてもいい本に出会いました。 「リーダーシップの旅」という本です。

リーダーシップの本質は、何か見えないものを見たいという気持ちがあって、自ら選択し行動する旅の過程にあるといいます。 リーダーシップとは、他人をリードするものでも、ましてや最初から社会を動かそうとするものでもなく、自分をリードすることから始まるのだと書かれていました。 「リーダーは自らの行動の中で、結果としてリーダーになる」のです。

私自身、在宅医療をやろうと思った当初は、先のことなどあまり見えていませんでした。ただ、私たちが安心して暮らせる社会をつくるために、 自分ができるところからスタートしました。そして、医師としての職業倫理のもとに、目の前にいる患者さんと真摯に向き合い、診療に全力で取り組みました。 「より良い仕組みをつくりたい」という気持ちでひたすら走り続け、ある日気がついたら一緒に歩いてくれる仲間がいました。

自分は組織を引っ張っていくようなリーダーには向いていないだろうと思っていましたので、この本を読み、こんな静かなリーダーシップでもいいのだと、 気持ちが楽になりました。見えないものを見ようという歩みを止めないことが大切なのだと、納得できました。

グループプラクティスで共に歩むメンバーは、見えないものを探して一緒に歩く仲間です。歩み続ける途中に出会う困難を乗り切る一つひとつのプロセスの中に、 チームの価値観が埋め込まれていくのだと思います。

医師というプロフェッショナルのリーダーシップは、自分を律し、患者さんと誠実に向き合う姿勢の中に存在するのではないかと思っています。 (了) (2008年/舩木良真)