働く理由

病院では味わえない、もう一つの医療の楽しさ

三つ葉在宅クリニック 院長 中村医師
中村医師

在宅医療のやりがいとは、どんなところにあると思いますか?

在宅医療は「生活を支える医療」と言われます。
患者さんが3人いれば、たとえ同じ病気でも、その人が大切にしていることや、家ごとの生活のスタイル、介護の仕方、経済状況、価値観はそれぞれに違います。例えば脳梗塞の80歳男性なら処方する薬は同じかもしれませんが、介護サービスの利用の仕方やリハビリに関する希望は一人ひとり異なります。そうした患者さんの希望に合わせて対応していくのが在宅医療です。患者さんが「在宅」を選択する大きな意味がここにあるのです。
「大変だなあ」と思われるかもしれませんが、患者さんの家に行けば患者さんの好みや生活スタイルがよく見えてきます。そして医師がその患者さんの希望をくみ取ることができたとき、「ありがとう」という言葉が返ってきます。この感謝のフィードバックが外来に比べて非常に大きいのが在宅医療の特徴で、本当に嬉しいものです。

どんなスキルが求められ、また身に付く医療でしょうか。

患者さんの疾患構成でいうと、高齢者が圧倒的に多く、寝たきり、認知症、脳梗塞後遺症などの慢性期疾患を中心に、医学部で習ったような病気がほとんど出てきます。他には20代から90代まで幅広い年齢層のがんターミナル、あるいは脳性麻痺などの先天的な病気や交通事故による頸椎損傷など障がい者の方に在宅医療のニーズがあり、プライマリケアから看取りまで幅広く対応しています。
 非常に幅広い知識と経験を求められますが、その分医師として大きく成長できます。こうした幅広い疾患を診るスキルを磨いていけるとともに、いろいろな人生と触れ合う機会が多いことも大きな魅力の一つです。高齢の患者さんたちは人生における大先輩でもあり、その話は非常に奥深く貴重です。医師としての役目を果たしつつも、彼らから多くを学び、例えば40年後、50年後、私たちが高齢になったときに、どんな医療を受けたいか、豊かな老後とは何かと考えています。

入職後のイメージを教えてください。

三つ葉に参加されたら、まず最初の1~2カ月は常勤医師の診療に同行していただきます。この間の目標はとにかく、“病院医療と在宅医療の違い”に慣れていただくこと。これまでの経験や知識が十分あっても、在宅の現場というのは戸惑うことがあると思います。
 もちろん、これまでの経験や勤務の頻度により、個々に慣れるペースは異なりますので、様子を見ながら、ご自身が納得された時点で、少しずつ患者さんをお任せしていきます。担当患者を持ってからも、チームでしっかりフォローしていきますので心配はいりません。
 今、三つ葉にいる医師は20人以上。もともと総合診療志向だった人もいれば、内科系・外科系問わずさまざまな専門の道を歩んでいた人がおり、その経験は多様です。しかしここに参加して、患者さんを全人的に診療することや、QOLを高めるためにご本人やご家族、仲間の医師やケアチームとともに知恵を絞っていく面白さを実感しています。
 在宅医療はコミュニケーションがカギ。人と話すことが好きな人なら、きっと一緒に楽しくやっていけると思います。

信頼できる仲間がいることがものすごいパワーになる

浅井医師
浅井医師

在宅医療の世界に飛び込んだ理由を教えてください。

私は卒後、なるべく幅広く診療したいと思って内科を選びました。 しかし若いうちは比較的多様に診ることができるのですが、年数を重ねるとだんだん狭まってきます。 7~8年目くらいになると、いろいろな疾患を診るのは若い先生に任せて、自分は同じような疾患ばかり診ることになります。
 このまま細分化された専門の世界で研ぎ澄ませていくのか、当初の望み通りもう少し幅広く診ていくのか悩んでいたときに、 三つ葉と出会いました。今どきの在宅医療のことなど全く知りませんでした。
 見学に来て診療に同行し、扱う疾患の幅が非常に広いことに圧倒されました。また、点滴や麻薬処方など、 かなりのレベルまで在宅で普通にやっていることに驚きました。
 また私は、一人で全部抱えて仕事をするのは向いていないとわかっていますから、開業したいという考えは持っていません。 相談できて、助け合える仲間がいることがとても貴重だと思っています。

三つ葉の最大の特徴であるカンファレンスについてどう思いますか?

一番大事なことは、カンファレンス自体をしていることです。 在宅医療は密室医療になりやすいので、個々の医師がそれぞれ担当の患者さんだけを診療し、 カルテに記載して共有しなければ何をやっているかわからなくなります。それをあえて曝すことによって、 緊張感を持って仕事ができています。しかも、それを毎日朝晩2回行い、その日に診た患者についてはその日中に共有し、 疑問点も解決できるところが最大の良さです。

休日は何をしていますか?

オンとオフの差は激しくて、オンのときは病院時代よりもいそがしいくらいですが、 オフの日は電話がかかってくることも全くなく、とてもリラックスして過ごすことができます。 IT化も進んでいるので、仕事は効率よく終わり、勉強会や待機当番の日以外は18時過ぎには完全フリーです。 趣味の音楽を聴いたり、最近は弾いたりもしています。長期休暇にはダイビングなどをしています。

在宅専門医をめざして

坂野医師
坂野医師

三つ葉に入職した経緯を教えてください。

常勤となる前に、1年間夜間待機ドクターとして三つ葉に勤務していました。 週1日、夜間の緊急往診対応をする専門スタッフです。そうやって在宅医療に関わるようになり、すごく面白い世界だと思ったのです。
 私は産婦人科医として、出産をはじめ女性の人生全般に関わってきました。 患者さんだけでなく、そのご家族との接点も大きい中で、自分はそういう関わり方が好きだという認識がありましたが、 在宅医療はそれよりもさらに患者さんの生き方やご家族との関わりというのが大切で、そこに大きな魅力を感じ、自分に合っていると感じました。
 三つ葉で定期訪問をするようになり、いろいろな患者さんと出会い、つい話に聞き入ってしまうこともよくあります。 人生の最期を前にした患者さんから、貴重な言葉をいただいたこともあり、学びの多い日々です。

在宅専門医をめざしていますね。

元の医局に所属のまま、内科的な全身管理を勉強させていただくという目的で、スタッフ・ドクター(常勤医)となりました。 同時に在宅医としての質も高めようと日本在宅医学会の専門医制度の研修医の申請をしました。 三つ葉は症例が大変多く、また在宅医療の本質を捉えているので、15例挙げなければならないポートフォリオ症例も、 たくさんの中から自分のテーマに合わせて選ぶことができます。また、カンファレンスや勉強会の時間を使って症例検討もできるので、 多角的に考え、なかなか面白いテーマ選びや中身の作成ができていると思います。
 残念ながら、1年目の受験は見送ったのですが、その分経験も積んで内容も充実させ、来年は専門医資格を取得したいと思います。

仕事が楽しいから、子供にもいつも笑顔で接することができる

鶴岡医師
鶴岡医師

在宅医療に興味をもったきっかけを教えてください。

病院の脳外科で働いていたころ、急性期治療を経て退院し、ご自宅に戻られる方と施設に入られる方で、 その後の表情がぜんぜん異なるのを見て、退院後の在宅での過ごし方というものに興味を持ちました。 施設に入った方は表情が乏しくなり、麻痺も進行していることが多いのに対し、在宅の患者さんでは、表情が明るくなってお元気になっている方が多かったのです。

今、どんな働き方をしていますか?

週2日勤務から始めて、現在は週4日、8時半から16時まで(17時までの日が1日)勤めています。 それから子どもを迎えに行って、家事・育児と普通の家庭生活ができ、満足しています。
 担当患者さんは比較的安定した方50人くらいで、月に2回ずつ訪問します。ご自宅という患者さんのプライベートな中に入り込んで、 深いところまで診ることができます。これは病院では味わえない良さです。
 また1日の診療スケジュールも余裕を持って組んであり、不安定で気になる患者さんがいれば、空いた時間帯で診ることができます。

三つ葉のどんなところが働きやすさにつながっていますか?

まず、カンファレンスのときなどの雰囲気がとても楽しいのです。みんなが仲良くてトゲのある先生がいなくて、 主治医としての意見を尊重しつつ、悩ましい症例では他の医師に相談もしやすいです。
 また、気になる患者さんがいるときには、勤務日・勤務時間以外でのフォローをお願いしても快く引き受けてくださるし、 十分情報を申し送りできているので、安心してお任せできます。家まで電話がかかってくることはありません。 そして次の出勤時に、こちらが聞かなくても、その患者さんのことを丁寧に申し送りしてくれるのが有り難いです。
 こんな風に、私がここで働くのが楽しいから、家に帰ったときに子どもにも優しくできていると思います。

医師であって女性であることを誇りに思える日々

神谷医師
神谷医師

在宅医療の道を選んだ理由を教えてください。

大学生のころ、興味があった進路として「家庭医療」と「麻酔科」への道がありました。 家庭医療を学ぶよい研修先はすべて遠方で、愛知県を離れたくなかったこともあり、麻酔科の道を選びました。 しかし、妊娠・出産で病院を離れ「やはり家庭医療を」と思ったときに、ゼロに近いところからでも研修させてもらえるところはないかと探して見つかったのが三つ葉でした。

「女医」であることに結構ご苦労されてきたそうですね。

学部に入るときに、面接で半分冗談で「女性医師はいらないよ」と言われたのが、トラウマになっています(笑)。
面接では「女性医師が必要だと思う」と力説して合格しました。しかし、それ以来、ここに至るまでは自分が女性であることにハンディを感じていました。 前の病院はそれなりに忙しく、体力がなくすぐに疲れてしまう自分に苛立ち、女性なのに医師になってよかったのかと迷うことがありました。 妊娠して体調を崩したときには、その思いはさらに強くなり、周りの方に迷惑をかけて申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
 しかし、今の仕事は、女医を歓迎してくれる点がたくさんあります。自分が女性であり、医師になったことを良かったな、とすごく思うようになりました。今、幸せです。

在宅医療のどんなところが、女性に向いていると思いますか?

例えば、子育てと介護は共通点があるとよく言われます。もちろん介護の方が大変な側面はたくさんあると思いますが、 子育ても孤独感や閉塞感を感じることが時々あります。そんなときに家に誰かが来てくれたり、保健所の集まりで同じような話を聞いてとても救われた経験があります。 それが患者さんのご家族の想いに重なることがあり、私たちが訪問して話をすることで、少しでも患者さんやご家族の支えの一つになれているのではとないかと思うのです。
 結婚して嫁の立場も経験し、母としておむつを変えたり食事を作ったり、という経験が、患者さんや介護するご家族への共感につながっています。 日々の生活からくるこの“生活感”を、とても生かせる職場だと思います。